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SPECIAL COLUMN

転職前夜、髪を切りに来た彼女の話

2026.04.04    コラム

その日、彼女は開口一番こう言った。

「転職が決まって。新しい自分になりたくて来ました」

30代後半。長く勤めた会社を離れて、新しい環境に飛び込む前日。

「髪だけでも変えたら、少し勇気が出るかなと思って」

その言葉に、ほんの少しだけ声が震えているのがわかった。

鏡の中の自分が、知らない人みたいだった

カウンセリングで、彼女はこう話してくれた。

「ここ何年も、同じ髪型のまま。忙しくて、自分のことは後回しで」

写真を見せてもらうと、ずっとロングのまま。

変えたい気持ちはあったけど、変える理由がなかった——そう笑っていた。

転職という大きな決断が、髪を変える「きっかけ」になったのだと思う。

「似合う」は、自分では気づけない

「どのくらい切りますか?」と聞いたら、彼女は少し困った顔をした。

「正直、わからないんです。似合う髪型が」

骨格と髪質を見ながら、鎖骨ラインのボブを提案した。

「軽くなりますよ。でも、落ち着いた印象はちゃんと残ります」

施術中、最初は緊張していた肩が、少しずつ下がっていくのがわかった。

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帰り道、ウィンドウに映った自分に

仕上がりを見て、彼女はしばらく黙っていた。

そのあと、小さく「……いい」とだけ言った。

お会計のとき、もう一度鏡をのぞき込んで、少し笑った。

「月曜日、この髪で出勤します。なんかちょっと、楽しみになってきました」

サロンを出ていく後ろ姿が、来たときよりほんの少しだけ、軽く見えた。

まとめ

髪を変えたからといって、人生が劇的に変わるわけではないかもしれません。

でも、鏡を見たときに「悪くないな」と思えたら。

新しい場所に踏み出す朝に、少しだけ背筋が伸びたら。

それだけで十分なのかもしれません。

なんでもない日が、ほんの少しだけよくなりますように。

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